Q&A

Q.遺産分割の手続きはどのように進められるのでしょうか?

A.

「段階的進行モデル」を意識して手続を進めることが望ましいと考えます。
遺産分割の手続きには、遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判の手続があります。
遺産分割協議は、相続人間での話し合いで行う場合です。遺産分割調停も話し合いで行う場合ですが、裁判所のもとで行う手続です。遺産分割審判は、調停がまとまらなかった場合に行われる手続です。
遺産分割の手続においては、家庭裁判所での調停手続が利用されることが多くあります。そこで、遺産分割調停において、どのように手続が進められていることをふまえて、遺産分割協議を行えば、仮に、調停手続になったとしても、より早期の問題解決が可能となり得ることが考えられます。
そして、多くの家庭裁判所での調停手続においては、「段階的進行モデル」に基づいて手続が進行されています。
「段階的進行モデル」とは、次の順番で、当事者の主張を整理し、各論点について対立点があるときは、これを調整して合意の形成を図るモデルのことをいいます。具体的には、

① 相続人の範囲を確定する。
② 遺産の範囲及び遺産に付随する法律関係を確定する。
③ 遺産を評価する。
④ 特別受益・寄与分を確定する。
⑤ 遺産の分割方法を確定する。

以上の5つの段階を踏んで相続人間の合意を形成していきます。
遺産分割において、感情的な対立が生じやすい特別受益の問題や寄与分の問題は、4番目の段階で整理していくものとされています。この段階まで進んでいれば、相続人間の感情的対立も落ち着いていることが多いので、冷静に、特別受益・寄与分の問題を話し合うことができることもあるかと思います。
相続人間での遺産分割協議をする場合においても、「段階的進行モデル」に基づいて話し合いを進めることで、冷静に話し合いを進めることが可能となると考えています。

Q.遺産分割について、相手方(他の相続人)が弁護士を代理人として立ててきました。どのようなことに注意すればよいでしょうか?

A.

まず、どのような事件においても、相手方が代理人として弁護士を立てた場合(通常は、その代理人弁護士名で受任通知が送付されてきます。)、以後は、相手方本人と直接交渉することは控え、相手方代理人弁護士と交渉すべきです。相手方代理人からの受任通知にも、その旨が記載されていることが通常です。
次に、相手方が、弁護士を代理人としてつけた場合、相手方は、もはや協議による決着にこだわっていない、審判までいくことを覚悟していると思われます。そして、相手方弁護士は、審判になった場合に、どのような結論が下されるのかを想定しながら、交渉してくるのが通常です。ですから、あなたも、審判になることも想定して、交渉する必要があります。
したがって、相手方が弁護士を代理人として立ててきた場合は、正式に依頼をするかどうかは別として、早期に、一度、弁護士に相談した方がよいと思われます。

Q.特別受益とは、どのようなものでしょうか?

A.

相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた人がいる場合、その受けた利益のことを「特別受益」といいます。その場合には、利益を受けた相続人は、いわば相続分の前渡しを受けたものとして、遺産分割において、その特別受益分を遺産に持ち戻して(これを「特別受益の持戻し」といいます。)具体的な相続分を算定することになります。

何が「特別受益」になるのかについては、民法903条1項は、「遺贈」「婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として(受けた)贈与」と規定しています。

「贈与」とは、遺言によって遺言者の財産の全部または一部を相続人等に譲渡することです。

「婚姻もしくは養子縁組のための贈与」については、一般的には、通常の結納金や結婚式の挙式費用は含まれず、特別の持参金や支度金が、特別受益になると説明されています。もっとも、当該家庭の生活水準や他の相続人について支出された同種の費用とのバランス等に照らして、「相続財産の前渡し」とみられる贈与であるか否かを基準として判断されます。

「生計の資本としての贈与」については、一般的には、独立のための事業資金等があげられます。また、高等教育の費用が、「生計の資本としての贈与」にあたるとして、特別受益が問題となることがあります。ここでも、当該家庭の経済的事情等や他の相続人とのバランス等に照らして、「相続財産の前渡し」とみられる贈与であるか否かを基準として判断されます。

何が「特別受益」になるのかについては、具体的な事情をふまえた判断をする必要がありますので、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

Q.寄与分とは何ですか?

A.

共同相続人の中に、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がいたときに、この特別の寄与を考慮し、この者に対して特別に与えられる相続財産への持分のことをいいます。
たとえば、

・工場を営む親を助けて農作業に従事し、経営規模を拡張した長男
・高齢の親のために、親が住んでいる住宅を全面的にバリアフリーに改修するための改修費用を援助した長女
・認知症の進んだ母親を引き取って介護したり、入退院の付き添いや日常の世話をしてきた二女
・独り暮らしをしている母親に対して、毎月仕送りをしていた二男
・賃貸マンションを所有していた父親に代わって賃貸料の回収、マンションの修繕、家賃不払い等の賃借人との退去交渉を行ってきた三男

これらの寄与行為を遺産分割にあたって考慮していくことを寄与分の制度といいます。

もっとも、これらの寄与行為がすべて寄与分として考慮されるわけではありません。寄与分として認められるためには、①相続人自らの寄与があること、②当該寄与行為が「特別の寄与」であること、③被相続人の遺産が維持または増加したことが必要です(民法904条の2)。

①の要件は、比較的に客観的に判断できそうですが(もっとも、養子がいたり認知した子がいたりすると複雑になってきます)、②や③は、いずれも評価を伴うものであり、すんなりと解決できないことが多い問題です。寄与分の問題は、遺産分割協議のみならず遺産分割調停・審判を見据えて、どのように主張するのか、どのような資料をそろえるべきかなど、一度、相談してみてください。

Q.私には、自宅の不動産のほかには、めぼしい財産はないので、遺言書は必要ないと思うのですが、それでも、遺言書を作成した方がよいでしょうか?

A.

たしかに、遺言書を作成するというと、莫大な財産をもっている人が作成するというイメージがあります。
しかし、遺産分割事件のうち認容・調停が成立した件数を遺産の価額別でみてみると、遺産が1000万円以下の場合が約35%、5000万円以下の場合が約43%をしめるとされています(令和3年度司法統計を参考にしました。)。このように、1000万円以下の遺産総額でも家庭裁判所での遺産分割調停事件となっているのが現状です。遺産総額の多寡は、あまり関係ないといえると思います。
また、これまでのご自分の人生を通して築き上げてきた財産を、ご自分の死後にどのように相続してもらいたいかをはっきりさせておくことも、残された家族にとっては、重要なことだと思われます。そういったご自身の最終の意思を表すためにも遺言書を作成することをおすすめします。
遺言書作成にあたって、不備がありますと、せっかく作成した遺言書の効力がなくなってしまう可能性もありますので、一度、当事務所へご相談いただければと思います。

Q.遺産分割の当事者について
父が亡くなり、遺産には、不動産や預貯金があり、相続税の申告をしなければならないと思っております。そこで、遺産分割協議書を作成しておこうと思います。
遺産分割協議をするためには、誰との間で協議すればよいのでしょうか?

A.

遺産分割の当事者となるのは、原則として、共同相続人です(民法907条2項)。
共同相続人が誰であるかは、被相続人の出生から死亡までの戸籍(全部事項証明書(戸籍謄本)、改製原戸籍謄本、除籍謄本等)を取り寄せることで確認していきます。遺産分割の当事者に漏れがあったりすると、せっかく遺産分割協議が成立しても、全体として無効となってしまいますので、慎重に、確認していく必要があります。
戸籍の取り寄せは、本籍地のある役所に申請をすることになります。本籍地のある役所が遠隔地にある場合には、郵送で取り寄せることになります。
Qの例によると、亡くなられたお父様の相続人としては、お父様の配偶者(相談者の母親)、相談者、相談者のご兄弟が考えられます。これらの皆さんが、近くに居住しているのであれば、戸籍の取り寄せは容易にできると思われます。
しかし、もし、相談者のご兄弟のうちの1人が、お父様が亡くなる前に死亡しており、亡くなられたご兄弟にお子さん(お父様からすればお孫さん)がいらっしゃった場合は、お孫さんが相続人になります。ご家族皆さんに、それぞれ交流があり、このお孫さんと連絡がとれるようであれば、お孫さんの戸籍の取り寄せも容易にできると思われます。他方で、あまり、連絡を取り合っていなかった場合、そもそも、お孫さんの存在自体を知らなかったような場合には、改製原戸籍謄本や、除籍謄本等を取り寄せる必要が出てきます。
改製原戸籍謄本や除籍謄本等は、活字で書かれていることはあまりありませんので、何と書かれているのかを判読するだけでも時間がかかることがあります。
相続人の調査は、思った以上に、時間と手間がかかることが多いものです。そういった場合には、当事務所の相続人調査パックをご検討してみてください。

Q.遺留分とは、どのようなものでしょうか?

A.

遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹以外)に最低限保障された遺産の取り分のことをいいます。言い換えれば、「最低でもこの割合だけは遺産を取得できる」と主張できる受取分を指します。
たとえば、「長男にすべての財産を相続させる。」旨の遺言があった場合や、生前に愛人にほとんどの財産を贈与していたような場合には、遺留分の侵害の有無が問題となります。
ご自身の遺留分が侵害されているかどうかを把握するには、まず、①相続開始時における被相続人の積極財産(遺贈財産も含みます)に②相続人に対する生前贈与の額(原則として10年以内)と③第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内)を加えて、④被相続人の債務の額を控除して算出した価額に、総体的遺留分の割合を乗じて、さらに、法定相続分の割合を乗じて計算します。
また、この遺留分侵害額の請求権には、期間的制限があります(民法1048条)ので、期間的制限を徒過しないように留意する必要があります。

Q.事業承継について

A.

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐこととされています。
日本の産業を支えている中小企業の跡継ぎ問題の重要性は、政府も認識しており、事業承継に関する税制改正を含む法律改正が頻繁になされています。
中小企業を経営されている方々も事業承継の問題の重要性は理解されているものの、何から手をつけてよいのかに戸惑われていることが多いのが現実です。
事業承継の方法には、さまざまなものがあります。しかし、どれが正解かというものはありません。それぞれの会社の事情や経営者や後継者の事情を考慮して、ベストな方法を考慮する必要があります。相続税対策だけを考えて方法を選択したとしても、ずっと継続していく会社の経営に支障が出てしまっては、本末転倒といえます。
まずは、会社の現状分析や経営者ご自身の資産状況の把握や後継者の会社経営への思い等をしっかりと把握した上で、どのような方法をとっていくかを検討する必要があります。
当事務所では、まずは、会社の簡易健康診断や事業承継診断を行いつつ、経営者や後継者の方々との面談をしていき、ベストな方法をご提案させていただくこととしています。また、当事務所と連携が可能な税理士とも共同して対応させていただくことも可能です。
ご自身の会社の跡継ぎ問題・事業承継が気になったら、まずは、当事務所にご連絡ください。

Q.相続登記が義務化されると聞きましたが、どういったことなのでしょうか?

A.

令和6年4月1日から、不動産を相続した場合に、相続登記を申請することが義務化されます。これは、不動産(土地・建物)の所有者が亡くなったのに相続登記がされないことから、登記簿を見ても持ち主が分からず、復旧・復興事業や取引を進められないといった問題が生じているため、そういった問題を予防するために設けられました。
令和6年4月1日からの義務化ですが、3年間の猶予期間があります。
また、「相続人申告登記」の手続きをすることで、相続登記の申請義務を果たすこともできます。「相続人申告登記」の手続きとは、自分が相続人であることを申告して、それを示す登記を提出することで相続登記の申請義務を果たしたことになるものです。とはいえ、当該不動産が、共有であることには変わりはないので、問題の先送りになりかねません。
やはり、相続人の全員で、遺産分割協議を行い、その結果をふまえて相続登記の申請をするのがベストだと思われます。
遺産分割協議を行うには、相続人の確定、相続財産の確定等時間と手間のかかる作業が必要となることが多いです。相続登記のことが気になったら、まずは、当事務所にご連絡ください。

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