2024/03/07 コラム
自筆で作成する遺言書の書き方をわかりやすく解説!例文も複数紹介
目次
遺言書のなかでも、自筆で好きなタイミングに好きな場所で作成できる「自筆証書遺言」を検討されている方も多いでしょう。
ただ、遺言書を書くにあたって「どこまで自由に作成していいのか」「指定されている書き方がわからない」このようなお悩みや疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
自筆で遺言書を作成したいと考えるにあたって、適切な書き方を事前に把握しておきたいですよね。
この記事では、自筆証書遺言の書き方やルールを解説しています。
加えて、具体的な事例別のわかりやすい書き方や無効になってしまう例文、押さえるべきポイントも紹介しています。
この記事を読むことで、遺言に関する理解を深められ、自筆証書遺言を正しく作成するためのヒントを得られるでしょう。
「自筆証書遺言の書き方が知りたい」「遺言書の簡単な書き方や例文を知りたい」このようなお悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.自筆で作成する遺言書(自筆証書遺言)の書き方
自筆証書遺言で遺言書を作成するにあたり、下記5つの基本といえる書き方をご紹介します。 遺言を書き始める前に把握しておきましょう。
- 消えないペンで自筆により作成
- 日付を明記
- 署名・押印をする
- 誰に何をどのくらい相続させるのか明確に記載
- 訂正時のルールを守る
それぞれ詳しく解説いたします。
1-1.消えないペンで自筆により作成
自筆証書遺言は、その名のとおり自筆で作成することが必須条件です。
たとえ遺言者本人の希望だったとしても、代筆やパソコンによる文章の作成、ビデオレターといった遺言は無効となってしまうため、注意しましょう。
自筆で遺言を書く際、使用するペンは書いたあとに消える心配がない、油性ボールペンや筆ペンなどがおすすめです。
とはいえ、シャープペンシルや鉛筆での作成も問題はありません。
しかし、消えてしまうリスクのあるペンを使用した場合、遺言書の一部が消えてしまうことによって、せっかく作成した遺言書が無効になるリスクもあります。
そのため、消えないペンで作成するほうが無難でしょう。
1-2.日付を明記
遺言書を作成した日付を明記しましょう。
年度の記載忘れや、「◎月吉日」「△月末日」といった表記は無効となるため、必ず年度から月日まで正確に記載します。
1-3.署名・押印をする
遺言者の名前も忘れず記載します。
署名と併せて押印もセットで対応し、忘れないようにしましょう。
押印は消えかかっていたり、不明瞭であると判断される場合には、遺言書が無効となるリスクがあります。
はっきりと内容を確認できるよう押印しましょう。
1-4.誰に何をどのくらい相続させるのか明確に記載
誰に何を相続させるのか、明確に記載できていないと、遺言が無効と判断されたり、希望通りに相続手続きを進めてもらえないリスクがあります。 たとえば、「〜をまかせる」といった表現は、まかせるの意味に与えるという意味が含まれていないと判断され、遺贈に関して裁判で認められなかった事例があります。 「まかせる」といった表現は使わず、相続人に財産を譲る場合は「相続させる」、相続人でない人に遺贈する場合は「遺贈する」と記載しましょう。
他にも、「自宅は妻に相続させる」といった表現は、自宅が土地と建物を含んだ意味となるのか・どちらか一方か不明瞭であるため、明確に記載をする必要があります。
1-5.訂正・加筆時のルールを守る
遺言書に記載した内容を訂正・加筆する際には、ルールがあるので把握しておきましょう。
具体的なルールをそれぞれ解説します。
1-5-1.訂正時のルール
1)訂正したい箇所に二重線を引く。
2)訂正内容は二重線を引いた近くに記載する。
縦書きは二重線の横に、横書きは二重線の上に記載する。
3)訂正内容の近くに「本行で○字削除 △字記入」と記載し、署名をする。
4)二重線のすぐ近くに、遺言書の署名時に使用しているもので訂正印を押印する。
1-5-2.加筆時のルール
1)加筆をしたい箇所に吹き出しを記載し、そのなかに加筆した内容を記載する。 2)加筆箇所のすぐ近くに「本行で○字記入」と記載し、署名をする。 3)加筆した場所のすぐ近くで遺言書の署名時に使用しているもので訂正印を押印する。
2.遺言書を作成する前に把握・準備しておくべきこと
遺言書を作成する前に、下記の4つについて把握・準備をしておくとスムーズに作成を進められるのでおすすめです。
- 財産調査をして財産目録を作成する
- 相続人の把握をしておく
- 署名・押印をする
- 遺留分に配慮し財産分配を考える
- 付言事項の記載を検討する
それぞれ詳しく解説します。
2-1.財産調査をして財産目録を作成する
遺言書を書く前に、ご自身にどれだけ財産があるのか、何が財産に該当するのか調査しておくことをおすすめします。
相続財産には、預貯金や不動産といったプラス財産だけでなく、借金や住宅ローンなどのマイナス財産も含まれるので注意しましょう。
このときに調べた財産の内容をもとに、財産目録も作成しておくことをおすすめします。
財産目録に記載する内容は、プラスとマイナスを併せた財産の内容・金額を記します。
自筆証書遺言であっても、財産目録はパソコンや代筆での作成が認められていますので、自筆以外の方法も検討し作成しましょう。
お一人での作成に不安がある場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談・依頼するのもおすすめです。
2-2.相続人の把握をしておく
相続人とは、財産を受け継ぐ権利を持った人を指します。 このなかでも民法に基づいて相続権を持った人を法定相続人と呼びます。 法定相続人には順位が決まっており、下記に続柄も記載するので参考にしてみてください。
- 常に相続人:配偶者
- 第一順位:子ども
- 第二順位:親
- 第三順位:兄弟、姉妹
上記の方以外は、民法で定められた相続人には該当しないため、それぞれ考慮し遺言書を作成するようにしましょう。
2-3.遺留分に配慮し財産分配を考える
遺留分とは、兄弟・姉妹を除いた法定相続人に最低限保証されている相続財産の割合を指します。
遺留分に配慮した財産分配を考え遺言書を作成できていないと、遺言書が原因で家族が揉めるリスクが発生してしまうでしょう。
具体的な遺留分を考慮できていない遺言書の例としては、下記のような事例・内容が挙げられるので参考にしてみてください。
- 子どもが二人いるにも関わらず「一人にのみ全財産を相続させたい」と記された遺言書
- 「相続人Aにだけは財産を譲らない」といった遺言書
上記の方以外は、民法で定められた相続人には該当しないため、それぞれ考慮し遺言書を作成するようにしましょう。
2-4.付言事項の記載を検討する
付言事項(ふげんじこう)とは、法的効力がないもので、遺言書に家族へ対してのメッセージや希望を記載できる事項を指します。
付言事項は自由に作成できることから、家族に対してシンプルにご自身の思いを伝えられるポイントとなるでしょう。
相続で親族同士の争いが生じないようにするために、付言事項を記載するのは有効な手段です。
誤解が生じそうなポイントの説明としてや、最後に家族に対する感謝の気持ちを付言事項として記載することを検討してみてはいかがでしょうか。
3.自筆証書遺言のひな形
自筆証書遺言のひな形を一例としてご紹介します。
自筆で遺言を作成したいとお考えの方は、下記内容を参考にしてみましょう。
※すべて自筆で作成する必要があります。
自筆証書遺言の様式については、法務局も詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
4.遺言書の書き方を事例別で解説
遺言書の文面を考えるうえで、ご自身の希望する財産分配に近い事例を参考にしたいですよね。
次に遺言書の書き方を事例別に下記の4つを参考までにご紹介します。
- 一人にのみ相続させたい場合
- 相続人以外に財産を譲りたい場合
- 一部の相続人に多く財産を譲りたい場合
- 株式を譲る・事業を継がせたい場合
ぜひ参考にしてみてください。
4-1.一人にのみ相続させたい場合
相続人一人にのみ相続をさせたい場合は、下記のように記載しましょう。
例
私は、私の所有するすべての財産を妻A(昭和○年○月○日生まれ)に相続させる。
相続人が一人のみであればトラブルが発生するリスクは低いです。
しかし、子どもや親など他にも相続人がいるなかで、例のような妻のみに全財産を相続させたいという場合は、遺言が原因でトラブルになるリスクがあります。
付言事項を活用し「なぜ妻のみに財産を譲るのか」説明したり、生前に家族に理解してもらえるよう話し合いの場を設けるようにしておくと、希望通りの相続が進められる可能性が高まるでしょう。
4-2.相続人以外に財産を譲りたい場合
友人や生前お世話になった人、内縁の妻・夫に財産を譲りたいと考えている場合、下記のように記載しましょう。例
私は、私の所有する別紙目録第一記載の預貯金を友人D(昭和○年○月○日生まれ)に遺贈する。
相続人ではない人に財産を譲りたい場合は、「相続させる」と記載するのではなく「遺贈する」と記載します。
相続人がいない場合はトラブルになるリスクは低いですが、相続人がいる場合はトラブルが発生する原因となります。
この場合、遺留分の範囲で相続人に財産を譲れるよう、財産分配を配慮できると良いでしょう。
4-3.一部の相続人に多く財産を譲りたい場合
「献身的に世話をしてくれた相続人Aには財産を多く譲りたい」
「長くともに過ごし、一番お世話になった妻Bに財産を多く譲りたい」
このように、一部の相続人に他の相続人よりも財産を多く譲りたいと考えることもあるでしょう。
例
4-4.株式を譲る・事業を継がせたい場合
法人化している株式を譲りたい場合と、個人事業を相続人に継がせたい場合の例をそれぞれ紹介します。
4-4-1.株式を譲りたい場合
誰にどれだけ株式を譲るのか明確にして、遺言書に記載しましょう。
企業名は正式名称で記載します。
例
私は、私の所有する次の株式を次男C(昭和○年○月○日生まれ)に相続させる。
△△証券株式会社の全株式
4-4-2.事業を継がせたい場合
個人事業を継がせたい場合、事業用資産も事業を引き継ぐ相続人に相続させられるよう遺言書に記載しましょう。
事業を引き継がない相続人に事業用資産を相続させてしまうと、のちに事業を引き継いだ相続人が資産を使えず、トラブルに発展するリスクがあるためです。
また、付言事項で事業を引き継いで欲しいと考えた相続人に対するメッセージと、その他の相続人に対する配慮のメッセージを記載できると、トラブルを避けられる可能性が高まります。
例
5.自筆証書遺言を作成する際の注意点
自筆証書遺言を作成する際に注意すべき点があります。
具体的には下記の2つです。
- 法務局の保管制度を利用する場合は用紙の要件を守る
- 財産目録への署名・押印も忘れない
それぞれ解説します。
5-1.法務局の保管制度を利用する場合は用紙の要件を守る
自筆証書遺言を法務局で保管してもらう場合は、用紙に関していくつか要件があります。
作成時は下記のポイントを守るよう注意しましょう。
- A4サイズの用紙
- ページ番号をすべてのページに記載
- 遺言書が5枚あれば、1/5、2/5、3/5〜といった形式で記載する
- 片面のみに記載
- 遺言書が複数枚となってもとじ合わせない
- 余白をつくる
- 上5mm、下10mm、右側5mm、左側20mm
5-2.財産目録への署名・押印も忘れない
自筆ではない形式で財産目録を作成した際は、財産目録へも署名・押印を忘れないように注意しましょう。 両面に記載した場合は、両面に署名・押印が必要です。
6.遺言作成時に併せて対応を検討すべき事項
遺言書を作成するうえで併せて対応を検討すべき事項があります。 必須で対応すべきことではありませんが、対応しておくことでご自身が望む相続を実現できる可能性が高まるでしょう。 今回は下記の2つについて、それぞれ解説します。
- 保管制度の利用
- 遺言執行者を選任
6-1.保管制度の利用
遺言書を作成したら、法務局に管理・保管を依頼できる制度の利用をおすすめします。
なぜなら、自筆証書遺言を自宅で保管していると、紛失や偽造のリスクがあるためです。
せっかく作成した遺言が紛失したり、偽造されてしまったりしたら、元もこもありません。
ご自身が望む相続を相続人に対して実現してもらうためにも、法務局に保管を依頼することをおすすめします。
6-2.遺言執行者を選任
遺言執行者とは、遺言者が亡くなられたあとに遺言内容を実現するための手続きを担う人物を指します。
遺言執行者を選任しておくことで、選任していない場合よりもスムーズに、遺言通りに相続手続きが進められる可能性が高まります。
遺言書内で遺言執行者の選任ができるため、検討し選任しておくことがおすすめです。
この遺言執行者は身内である相続人にまかせることもできますが、相続人から選任すると不要なトラブルを招くリスクもあるので避けるべきです。
身内ではない第三者も選任可能であるため、揉め事を発生させずにスムーズに手続きを進められるようにするためにも、下記のような専門家への依頼も検討しましょう。
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 行政書士
- 信託銀行の担当者
7.弁護士に遺言書作成について相談をするメリット
自筆証書遺言の作成について、弁護士に相談することにはいくつかのメリットがあります。
具体的には下記のような4つが挙げられます。
- 遺言書が無効にならない
- トラブルを防止するためのアドバイスをもらえる
- 遺言執行者も併せてお願いできる
- わかりにくい法律について教えてもらえる
それぞれ具体的に解説します。
7-1.遺言書が無効にならない
弁護士に遺言書作成を相談すれば、遺言書がのちに無効になるリスクを大幅に下げられます。
なぜなら、弁護士は相続問題の専門家であり、遺言が無効にならないための書き方・法律についても熟知しているからです。
弁護士に相談をすることで、無効になってしまわないよう添削してもらえたり、適切な書き方についてアドバイスをもらえるでしょう。
7-2.トラブルを防止するためのアドバイスをもらえる
弁護士に遺言書作成を相談すれば、親族が相続で揉めるリスクを大幅に下げられます。
なぜなら、弁護士は士業のなかでも、唯一司法書士や行政書士と異なり、紛争問題の解決にも介入ができるからです。
そのため、今まで解決してきた相続にまつわる紛争問題を参考に、トラブルを避けるための遺言となるようアドバイスをもらえることが期待できるでしょう。
7-3.遺言執行者も併せてお願いできる
遺言作成について相談をした弁護士に、そのまま遺言執行者をお願いすることも可能です。
遺言作成時の考え方や内容についても理解してくれている弁護士であれば、ご自身の思いをできる限り実現できるよう尽力してくれるでしょう。 すでに関わりのある弁護士であれば、安心して遺言執行者もお願いできるのではないでしょうか。
7-4.わかりにくい法律について教えてもらえる
遺言書を作成すること自体、一般の方はそう何度も経験するものではありません。
そのため、遺言書に関わる法律についても、普段の生活でなかなか関わることがない方のほうが多いでしょう。
遺留分や法定相続人・付言事項など、ご自身で調べても難しく感じ、ストレスに思う方も多いと思います。
このような方も弁護士に相談をすれば、遺言作成に必要な法律もわかりやすく解説してもらえるので、負担やストレス軽減につながるでしょう。
8.まとめ【遺言書の作成は適切に弁護士に頼るものもおすすめ】
いかがでしたか?
今回は遺言書の書き方について、できるだけわかりやすく解説しました。
自筆証書遺言を適切に作成するためには、正しい法律の知識が必要不可欠です。
書き方や法律の理解に自信が持てない方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。
広島市にある「いちじょう法律事務所」では、初回相談無料で承っています。
弁護士として15年以上活動してきた経験をもとに、適切なアドバイスを心がけておりますので、生前対策として遺言書の書き方でお悩みの方はお気軽にご相談ください。