2024/03/26 コラム
遺言が効力を発揮する内容とは?無効となる事例やLINE・口約束も有効か解説
故人の残した遺言が見つかった場合、その遺言がどんな効力を発揮するのか、気になる方は多いでしょう。
適切に作成された遺言にはさまざまな効力が認められており、相続に大きな影響を与えます。
遺言が効力を発揮する内容を把握することで、相続手続きをスムーズかつ適切に進めることができ、トラブルを回避できる可能性が高いです。
そこで、この記事では「遺言が効力を発揮する内容」を詳しく解説しています。
遺言が無効となる事例や、利用者の多いLINEでの遺言、口約束の遺言が有効であるかも解説してますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.遺言が効力を発揮する内容
遺言には法的効力があり、適切に作成されていればさまざまな効力を発揮します。
遺言が効力を発揮する代表的な内容は、下記の7つです。
- 遺産分配内容の指定・禁止
- 相続人の廃除
- 遺贈
- 内縁の妻や子どもの認知
- 未成年者に対する後見人の指定
- 生命保険金受取人の変更
- 遺言執行者の指定
それぞれ詳しく解説します。
1-1.遺産分配内容の指定・禁止
遺言で遺産分配内容が指定されていた場合、その内容は効力を発揮します。
遺産分配内容の指定とは、相続発生後におこなわれる遺産の分配について、内容を指定することです。
例えば、預貯金は長男に相続させ、不動産は次男に相続させるというように、遺産分配の内容が指定されていた場合、原則としてその内容にしたがって遺産分配をしなければなりません。
また、遺言では相続開始から5年以内であれば、遺産分配を禁止することも可能です。
遺産分配を禁止する旨が遺言で記載されていた場合、原則としてその期間中は遺産分配ができません。
1-2.相続人の廃除
遺言に相続人の廃除について記載されていた場合、その内容も効力を発揮します。
相続人の廃除とは、特定の相続人を相続から除外できる制度です。
ただし、誰でも相続から除外できるわけではありません。
対象となる人物の条件は下記です。
- 被相続人へ虐待をしていた人
- 被相続人へ重大な侮辱をしていた人
- 被相続人へその他の著しい非行をしていた人
遺言に相続人の廃除に関する内容が記載されている場合、対象となる人物は遺産相続できなくなります。
1-3.遺贈
遺贈について遺言へ記載されていた場合、その内容も効力を発揮します。
遺贈とは、遺言内容によって法定相続人ではない人に相続財産を贈ることです。
被相続人の財産は、原則として配偶者や子どもなどの法定相続人が引き継ぎます。
しかし、なかには法定相続人よりもお世話になった人や、財産を贈りたい愛人がいるケースもあるのです。
法定相続人以外に財産を贈りたいと遺言に記載がある場合、遺贈という形で指示通りに遺産分配をおこなう必要があります。
1-4.内縁の妻や子どもの認知
遺言に内縁の妻や子どもの認知する旨が記載されていた場合、その内容も効力を発揮します。
原則として、内縁の妻や子どもには財産を相続する権利がありません。
生前は認知していなくても、遺言に内縁の妻や子どもを認知する旨が記載されている場合、財産を相続する権利が認められるのです。
1-5.未成年者に対する後見人の指定
未成年者に対する後見人の指定について遺言へ記載されていた場合、その内容も効力を発揮します。
親権者が死亡し、未成年者に対して親権を持つ人がいなくなる場合、その後の監護養育や財産管理、契約などの法律行為をおこなう後見人が必要になる可能性が高いです。
未成年者に対する後見人の指定について遺言へ記載されていた場合、その内容にしたがって後見人の選定が必要になります。
1-6.生命保険金受取人の変更
遺言に生命保険受取人の変更について記載されていた場合、その内容も効力を発揮します。
生命保険受取人の変更は、本来であれば契約変更の手続きが必要です。
しかし、遺言内容として記載されている場合、その内容にしたがって生命保険の保険金を受け取る人の変更が認められます。
1-7.遺言執行者の指定
遺言に遺言執行者の指定について記載されていた場合、その内容も効力を発揮します。
遺言執行者とは、遺言内容を実現するために手続きや対応をおこなう人です。
遺言では、遺言内容を実現するために必要な手続きへ対応してもらう遺言執行者を指定したり、第三者に指定を委任したりすることが認められています。
2.遺言に記載されていても効力を発揮しない内容
遺言が効力を発揮する内容がある一方で、なかには遺言に記載されていても効力を発揮しない内容もあります。
具体的な内容は、下記の3つです。
- 付言事項
- 遺留分を侵害した遺産分配
- 婚姻関係の解消や養子縁組
それぞれ詳しく解説します。
2-1.付言事項
遺言に記載されている付言事項は、原則として効力を発揮しません。
遺言の付言事項とは、遺産分割に関係ない親族への感謝や、お願いを記載できる項目です。
例えば、葬儀・納骨に関する希望や、家族へのメッセージなどが記載されているケースが一般的でしょう。
この付言事項は、記載されていても法的効力を発揮しません。
そのため、付言事項に記載されている内容は、あくまでも遺言者からのお願い程度に考えることが重要です。
2-2.遺留分を侵害した遺産分配
遺留分を侵害する遺産分配も、遺言に記載されていても効力を発揮しません。
遺留分とは、一定の相続人に認められている最低限度の遺産取得割合です。
遺留分は遺言内容よりも優先されるため、遺言によって遺留分を侵害することはできません。
仮に遺留分を侵害する遺産分配について遺言へ記載されている場合、遺留分をめぐってトラブルにつながる可能性が高いので注意が必要です。
2-3.婚姻関係の解消や養子縁組
遺言は、内縁の妻や子どもを認知する以外の身分行為に関する事柄が記載されていても、原則として効力を発揮しません。
そのため、婚姻関係の解消や養子縁組について遺言に記載されていても、基本的に効力を持たないのです。
3.遺言が無効と判断されるケース
なかには遺言が無効と判断され、法的効力が認められないケースがあるのです。
相続対策として一般的に作成される「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」それぞれの形式別に、遺言が無効と判断されるケースを詳しく解説します。
3-1.自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言とは、遺言者が自筆で作成する遺言書の形式です。
詳しい作成方法については、下記の記事でも紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
下記のいずれかに該当する自筆証書遺言は、無効と判断される可能性が高いです。
- 遺言者以外が作成した自筆証書遺言
- 2人以上の連名で作成した自筆証書遺言
- パソコンやスマートフォンを用いて作成した自筆証書遺言(財産目録以外)
- ボイスレコーダーやビデオカメラを用いて録音・録画によって作成された自筆証書遺言
- 日付の記載がない自筆証書遺言
- 署名がない自筆証書遺言
- 正確な作成日時を特定できない、または作成日とは異なる日付が記載された自筆証書遺言
- 相続財産の記載が不明確で特定できない自筆証書遺言
- 訂正の方式に不備がある自筆証書遺言
- 新しい遺言書があり内容に矛盾が生じている自筆証書遺言
3-2.公正証書遺言の場合
公正証書遺言とは、公証役場で公証人と証人2人以上の立会いで作成する遺言書の形式です。
作成に公証人という専門家が介入するため、形式不備によって無効になりにくい特徴があります。
そのような公正証書遺言であっても、下記のいずれかに該当する場合は、無効と判断される可能性が高いです。
- 公証人の立会いなしで作成した公正証書遺言
- 条件を満たした証人2人の立会いなし、または証人になれない人が立ち会って作成した公正証書遺言
- 証人欠格者が立ち会うことで、証人の数が足りずに作成した公正証書遺言
- 公証人に遺言内容を口授せず、身振り手振りなどで伝えて作成した公正証書遺言
- 証人が席を外しているタイミングで作成した公正証書遺言
3-3.秘密証書遺言の場合
秘密証書遺言とは、公証役場で遺言書の存在のみを証明してもらう遺言書の形式です。
封をした状態の遺言書を公証人へ見せて存在を証明してもらうため、公証人を含む遺言者以外の第三者全員に遺言内容を秘密にできます。
そのような秘密証書遺言は、下記のいずれかに該当する場合は、無効と判断される可能性が高いです。
- 2人以上の連名で作成した秘密証書遺言
- 日付の記載がない秘密証書遺言
- 署名がない秘密証書遺言
- 正確な作成日時を特定できない、または作成日とは異なる日付が記載された秘密証書遺言
- 相続財産の記載が不明確で特定できない秘密証書遺言
- 訂正の方式に不備がある秘密証書遺言
- 新しい遺言書があり内容に矛盾が生じている秘密証書遺言
4.遺言の効力に関するよくある質問
多くの方が遺言の効力について疑問を持つポイントがあります。
遺言の効力に関するよくある質問は、下記の4つです。
- LINEの遺言は効力がある?
- 口約束や口頭の遺言は効力がある?
- 遺言の効力はいつから?
- メモに遺言が残されていた場合の効力は?
それぞれ詳しく解説します。
4-1.LINEの遺言は効力がある?
LINEの遺言には法的効力がありません。
LINEが提供するサービスの一つとして「タイムカプセル」というものがあります。
タイムカプセルは、LINEのトーク画面上で質問に回答することで、遺言を残せるサービスです。
タイムカプセルで作成した遺言に法的効力を持たせるためには、タイムカプセルで入力した内容をもとに自筆証書遺言を作成する必要があります。
LINEのトーク画面上で質問に回答しただけの遺言では、原則として法的効力が認められないので注意が必要です。
4-2.口約束や口頭の遺言は効力がある?
口約束や口頭での遺言には、法的効力がありません。
その理由として、遺言は「要式行為」であり、法令で定められた方式でないと効力を認められないからです。
口約束や口頭でのやり取りは遺言の方式に含まれず、仮に口約束や口頭で遺産分割に関するやり取りがあったとしても効力は認められません。
4-3.遺言の効力はいつから?
遺言に効力が生じるのは、遺言者が死亡したときからです。
遺言自体は、遺言者が遺言の意思表示をした時点で成立します。
しかし、遺言は遺言者がいつでも自由に内容の更新・撤回できるため、遺言者が死亡するまでは効力が生じないのです。
4-4.メモに遺言が残されていた場合の効力は?
メモに遺言が残されていた場合、遺言書としての要件を満たせていれば法的効力があります。
なぜなら、自筆証書遺言の場合は用紙の種類やサイズについて指定がないからです。
メモ帳はもちろん、ノートやチラシの裏への記載であっても、遺言書として法的な要件を満たせていれば、原則として遺言としての効力を持ちます。
5.遺言内容に納得がいかない場合の対処法
故人が残した遺言について、内容に納得がいかない場合もあるでしょう。
遺言内容に納得がいかない場合の対処法は、下記の3つです。
- 相続関係者全員から合意を得る
- 相続放棄を検討する
- 弁護士といった相続の専門家に相談する
それぞれ詳しく解説します。
5-1.相続関係者全員から合意を得る
遺言内容に納得がいかない場合、相続関係者全員から合意を得ることが対処法の一つです。
相続関係者全員から合意を得ることで、遺言内容に記載された方法以外での遺産分割が可能になります。
例えば「不動産は長男に相続させる」という内容の遺言に納得できない場合、長男を含む相続関係者全員から合意を得ることで、他の方法で遺産分割が可能です。
ただし、内容によっては相続関係者間のトラブルになる可能性もあるので、慎重に進めることが重要になります。
5-2.相続放棄を検討する
遺言内容に納得がいかない場合、相続放棄を検討することも対処法の一つといえるでしょう。
相続放棄とは、期限内に家庭裁判所へ申し立てることで、自身が持つ相続権を手放せる手続きです。
自身が持つ相続権を手放すことで、相続人ではなくなるので、遺言内容を含む相続トラブルに関わらなくて済みます。
ただし、相続放棄は一度承認されると、あとからやり直しや取り消しができないので、検討する場合は慎重な判断が必要です。
5-3.弁護士といった相続の専門家に相談する
遺言内容に納得がいかない場合、最も有効な対処法となるのが、弁護士といった相続の専門家への相談です。
弁護士をはじめとした相続の専門家は、遺言内容についても深い知見を有しています。
そのため、専門家に相談することで、相続や遺言に関する専門知識をもとに、現状抱えている問題に対して適切なアドバイスやサポートを受けることが可能です。
自分一人で悩むよりも、よりスムーズかつ適切に、遺言内容に関する悩みを解決できるでしょう。
6.まとめ【遺言や相続に関してお悩みの際は弁護士に相談を】
いかがでしたか?
今回は遺言の効力について、できるだけわかりやすく解説しました。
故人が残した遺言についてお悩みがあれば、相続の専門家である弁護士への相談がおすすめです。
広島市にある「いちじょう法律事務所」では、初回相談無料で承っています。
弁護士として15年以上活動してきた経験をもとに、適切なアドバイスを心がけておりますので、遺言の効力をはじめとした相続問題でお悩みの方はお気軽にご相談ください。