2024/04/23 コラム
デジタル遺言は相続対策として有効?おすすめな遺言書の形式も紹介
将来の相続対策として、遺言書作成をお考えの方もいらっしゃるでしょう。
遺言書の作成にはさまざまな方法があり、最近ではスマートフォンやパソコンを利用して作成するデジタル遺言が注目されています。
では、デジタル遺言を作成することは、相続対策になるのでしょうか。
この記事では、デジタル遺言が相続対策として有効なのか詳しく解説しています。
相続対策として遺言書を作成する場合の、おすすめな形式も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.デジタル遺言とは?
デジタル遺言とは、ウェブサイト上やスマートフォンのアプリなどを使用して、遺言を手軽に電子データとして作成および保管できるサービスです。
パソコンやスマートフォンを使用して、インターネット上であらかじめ決められたフォーマットに沿って入力するだけで遺言を作成できるとなれば、遺言について知識が少ない人でも手軽に作成できるようになるでしょう。
実際に内閣府では、デジタル遺言の制度化に向けた検討が2022年から進められています。
敷居が高いと思われている遺言の作成が、今後はデジタル遺言によって身近なものとなろうとしているのです。
2.デジタル遺言は相続対策として有効?
デジタル遺言は、遺言について知識がない人でも手軽に作成できるとして注目され始めています。
では、デジタル遺言を作成することで相続対策となるのでしょうか。
結論、現状はデジタル遺言を作成しても直接的な相続対策にはなりません。
なぜなら、デジタル遺言は正式な遺言の形式として認められておらず、法的な効力を持たないからです。
法的な効力のある遺言をするためには、法律で厳格に定められている要件を満たす必要があります。
現在の要件には、遺言書を「紙」で作成する必要があると定められているため、デジタル遺言では要件を満たせないのです。
3.デジタル遺言のメリット
デジタル遺言には、さまざまなメリットがあります。
具体的なメリットは下記の3つです。
- 手軽に作成できる
- 紛失や改ざんのリスクを軽減できる
- 専門家から遠隔でサポートを受けられる
それぞれ詳しく解説します。
3-1.手軽に作成できる
デジタル遺言は、手軽に作成できます。
インターネット環境が整っていれば、お持ちのパソコンやスマートフォンで作成が可能です。
作成する際には、用意されたフォーマットに沿って質問へ回答していくだけで遺言を作成できます。
従来の遺言は、それぞれの作成形式ごとに定められた要件を守って、文書にする必要がありました。
パソコンやスマートフォンの使用に慣れている場合は、従来の遺言よりもデジタル遺言のほうが手軽に作成できるでしょう。
3-2.紛失や改ざんのリスクを軽減できる
デジタル遺言は、紛失や改ざんのリスクを軽減できる点もメリットといえるでしょう。
従来の遺言書は、紙で保管する必要があるため、保管方法によっては紛失や改ざんのリスクがありました。
デジタル遺言は、データで遺言内容を管理できるため、紛失のリスクを大幅に軽減できます。
また、遺言データの暗号化によって、改ざんを困難にすることも可能です。
従来の紙で保管する遺言書と比較して、デジタル遺言は紛失や改ざんのリスクを軽減できるでしょう。
3-3.専門家から遠隔でサポートを受けられる
従来の遺言書は紙に記載する必要があるため、弁護士をはじめとした相続の専門家から遺言書作成のサポートを受けようと思うと、対面でやりとりをしなければならないケースが多いです。
そのため、専門家のところまでアクセスが悪い場所に住んでいたり、体が不自由で専門家のところまで出向くのが困難だったりする場合、遺言書作成のサポートを受けることが困難でした。
デジタル遺言であれば、Web上で遺言を作成できるため、専門家から遠隔でのサポートやリモートでのサポートが受けられるようになる見込みです。
デジタル遺言を活用することで、専門家へのアクセスが悪い場所に住んでいる方や、体が不自由な方でも、専門的なサポートを受けて適切な遺言を作成できるでしょう。
4.デジタル遺言のデメリット
デジタル遺言の作成を検討するうえで、メリットだけでなくデメリットについても把握しておくことが重要になります。
デジタル遺言のデメリットは下記の2つです。
- デジタルデバイスの操作に関する知識が必要
- 本人の真意に基づいて作成されたか判断が困難
それぞれ詳しく解説します。
4-1.デジタルデバイスの操作に関する知識が必要
デジタル遺言を作成するためには、デジタルデバイスの操作に関する知識が不可欠です。
近年、パソコンやスマートフォンの普及率は増加しており、これまで触れたことがないという人は少ないでしょう。
しかし、なかにはパソコンやスマートフォンなど、デジタルデバイスの操作が苦手という方もいらっしゃるはずです。
基本的な操作ができればデジタル遺言を作成することはできますが、デジタルデバイスの操作が苦手な方には作成が難しく感じることもあるかもしれません。
4-2.本人の真意に基づいて作成されたか判断が困難
デジタル遺言はWeb上で作成するという性質上、どうしても本人確認や遺言能力の確認が遺言者によっておこなわれたかどうか判断が困難です。
複合認証や電子署名によって本人確認をおこなうケースも多いようですが、なりすましのリスクは少なからず存在します。
遺言が本人の真意に基づいて作成されたかという点は、デジタル遺言が法的に有効と認められるために大きな課題となっているのです。
5.デジタル遺言の活用法
デジタル遺言は、作成しても法的効力を持たないのが現状です。
しかし、法的効力を持たなくても、作成することに意味がないわけではありません。
デジタル遺言を活用することで、自分の思いや考えを相続人へ伝えることができます。
法的効力を持つ正式な遺言書にも、付言事項という項目があり、自分の思いや考えを自由に記載できます。
付言事項は、デジタル遺言と同様に法的効力がありませんが、思いや考えが相続人に伝わることで、相続トラブルを防げた事例もあるようです。
法的効力を持つ正式な遺言書は、作成に専門知識が必要なため、作成しない選択をする人もまだまだ多くいらっしゃいます。
少しでも相続トラブルの予防につながるのであれば、デジタル遺言を活用して自分の思いや考えを相続人へ伝えることは有効な活用法の一つといえるでしょう。
6.デジタル遺言の作成方法
デジタル遺言を作成する場合、一般的な作成方法は下記の2つです。
- スマートフォンアプリを利用する
- Webサービスを利用する
それぞれ詳しく解説します。
6-1.スマートフォンアプリを利用する
デジタル遺言を作成する場合、スマートフォンアプリの使用は一般的な方法の一つです。
近年、デジタル遺言を作成するためのスマートフォンアプリは多くリリースされています。
それらを活用することで、手軽にデジタル遺言を作成できます。
アプリによって具体的な作成方法や、作成できる内容は異なるため、さまざまなアプリを比較検討すると良いでしょう。
6-2.Webサービスを利用する
デジタル遺言を作成する場合、Webサービスを利用することも方法の一つです。
Webサービスを利用する場合は、デジタルデバイスさえあればアプリのインストールを必要とせず、デジタル遺言を作成できます。
具体的な作成方法や、作成できる内容はWebサービスごとに異なるため、さまざまなサービスを比較検討することがおすすめです。
7.相続対策として有効な遺言書の形式
現状、デジタル遺言は法的に効力が認められないため、直接的な相続対策にはなりません。
相続対策として有効な遺言書の形式は下記の3つです。
- 自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
- 公正証書遺言
それぞれ詳しく解説します。
7-1.自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言内容や作成日時、遺言者名などを自書して作成する遺言書の形式です。
詳しい作成方法については、下記の記事でも紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
自筆で作成する遺言書の書き方をわかりやすく解説!例文も複数紹介
自筆証書遺言は適切に作成されていれば、法的効力が認められます。
将来のトラブルを予防するために、自筆証書遺言を作成することは相続対策として有効です。
ただし、自筆で作成する必要があるという性質上、遺言内容に不備や誤りがあることで無効になるケースも少なくありません。
適切に作成するためには、弁護士をはじめとした専門家に作成をサポートしてもらうことがおすすめです。
7-2.秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、公証役場で遺言書の存在だけを証明してもらう、遺言書の作成形式です。
封をした状態で遺言書の存在だけを証明してもらうため、公証人はもちろん、遺言者以外の誰にも遺言内容を知られません。
遺言内容を秘密にした状態で、相続対策をしたい場合は秘密証書遺言の作成を検討するといいでしょう。
ただし、遺言内容を遺言者以外の誰にも知られないという性質上、内容や形式に不備や誤りがあることで無効となるケースも少なくありません。
秘密証書遺言は、遺言内容や作成形式に十分な注意を払い、慎重に作成することが重要です。
7-3公正証書遺言
公正証書遺言とは、証人2人と公証人の立ち会いで作成する遺言書の形式です。
遺言者は遺言内容を口述し、公証人が文書化します。
自筆証書遺言や秘密証書遺言と比較して、作成に公証人が介入するため、形式不備によって無効になるリスクが低いです。
また、遺言書の原本が公証役場で保管されるため、作成後の紛失や改ざんなどのリスクも低減できます。
そのため、相続対策として遺言書を作成する場合は、公正証書遺言の作成が非常に有効です。
ただし、公正証書遺言を作成するにあたって用意する証人には、いくつか条件が定められており、誰でもいいわけではありません。
公正証書遺言の作成にともなう証人は、弁護士をはじめとした専門家に依頼することもできるので、作成のサポートをあわせて依頼を検討するといいでしょう。
8.まとめ【遺言書に関するお悩みは弁護士へご相談を】
いかがでしたか?
今回は、デジタル遺言の有効性について、相続対策としておすすめの作成形式をあわせて解説しました。
現状、デジタル遺言は直接的な相続対策にはなりません。
遺言書による相続対策をお考えの際は、相続の専門家である弁護士へ相談し、適切な方法で作成することがおすすめです。
広島市にある「いちじょう法律事務所」では、初回相談無料で承っています。
弁護士として15年以上活動してきた経験をもとに、適切なアドバイスを心がけておりますので、遺言書作成をはじめとした相続問題でお悩みの方はお気軽にご相談ください。