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2024/06/27 コラム

遺言書によって全財産を一人に相続させることはできる?具体的な方法や注意点を解説

遺言書の作成を検討する理由は、人それぞれ異なります。
なかには「全財産を一人に相続させる」ために、遺言書の作成を検討している方もいらっしゃるでしょう。
では、遺言書によって全財産を一人に相続させることはできるのでしょうか。
この記事では、遺言書によって全財産を一人に相続させることはできるのか詳しく解説しています。
注意点や遺言書作成以外の方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.遺言書によって全財産を一人に相続させることはできる?

結論からお伝えすると、遺言書によって全財産を一人に相続させることはできます。
遺言書には遺産分割の方法について記載でき、全財産を一人に相続させる内容を記載するのも可能です。
財産を遺言書の内容によって贈ることを遺贈といい、相続人はもちろん、第三者に対しても認められています。
ただし、遺言書は適切に作成しないと無効となる恐れがあるため、全財産を一人に相続させたい場合は慎重な作成が必要です。

2.全財産を一人に相続させる遺言書の書き方

原則として、遺言書によって全財産を一人に相続させることはできます。
ただし、遺言書には要件が厳格に定められており、適切に作成しないと無効になってしまうこともあるので注意が必要です。
そこで、全財産を一人に相続させる遺言書の書き方を詳しく解説します。

2-1.簡単に記載する場合

全財産を一人に相続させる簡単な遺言書の書き方は下記のとおりです。

  1. 「全財産を〇〇に相続させる」と記載する(財産を相続させる相続人は特定できるように記載する)
  2. 遺言書を作成した具体的な日付を記載する
  3. 署名と押印をする

特に懸念がない場合は、上記のポイントを押さえて遺言書を書けば問題ないといえます。
ただし、相続財産の種類が多い場合は、相続財産調査が困難となるため、詳細に記載したり財産目録を添付したりしたほうがいいでしょう。

2-2.詳細に記載する場合

全財産を一人に相続させる詳細な遺言書の書き方は下記のとおりです。

  1. 財産を具体的に記載する(不動産の場合は登記簿謄本のとおりに、金融資産は金融機関名・支店名・口座番号も記載する)
  2. 漏れがないように「これらを含むすべての財産を〇〇に相続させる」と記載する(財産を相続させる相続人は特定できるように記載する)
  3. 遺言書を作成した具体的な日付を記載する
  4. 署名と押印をする

相続財産の項目が複数ある場合は、遺言者の意思を伝えるために、上記のように詳細な内容で記載しておいたほうが安心でしょう。

2-3.財産目録を添付する場合

全財産を一人に相続させるために、財産目録を添付する遺言書の書き方は下記のとおりです。

  1. 「財産情報については別紙を添付」と記載する
  2. 「全財産を〇〇に相続させる」と記載する(財産を相続させる相続人は特定できるように記載する)
  3. 遺言書を作成した具体的な日付を記載する
  4. 署名と押印をする

財産情報を記載する場合は、情報量が多くなったり、書き間違いが起きたりする可能性が高いため、別紙に財産目録を添付することがおすすめです。
財産目録が複数になる場合は「別紙1」「別紙2」と記載し、何についての情報かわかるようにしましょう。

3.遺言書によって全財産を一人に相続させる際の注意点

遺言書によって全財産を一人に相続させる際には、いくつかの注意点があります。
具体的な注意点は下記のとおりです。

  1. 他の相続人が遺言書の無効を主張することがある
  2. 相続税が高額になる可能性がある
  3. 遺留分を考慮する

それぞれ詳しく解説します。

3-1.他の相続人が遺言書の無効を主張することがある

遺言書によって全財産を一人に相続させる場合、他の相続人が遺言書の無効を主張する可能性があるので注意が必要です。
相続人が複数人いるにも関わらず、全財産を一人に相続させるという内容の遺言書を作成する場合、遺言内容に不満を持つ相続人が出てくるかもしれません。
特に自筆証書遺言で作成する場合、遺言書の有効性をめぐってトラブルが起こる可能性は十分にあります。
なぜなら、自筆証書遺言は自筆で作成する必要があり、要件をきちんと守れているか、偽造やねつ造されていないかなどが争点になりやすいからです。
遺言書によって全財産を一人に相続させたい場合は、弁護士をはじめとした専門家に相談し、法的有効性の高い遺言書を作成するといいでしょう。

3-2.相続税が高額になる可能性がある

遺言書によって全財産を一人に相続させる場合、全財産を相続する人が高額な相続税を納税しなければならなくなる可能性があるので、注意が必要です。
財産を相続するためには、相続税を納税しなければなりません。
相続税は10%から最大で55%の税率で課税されます。
そして、この税率は相続する財産が高額になればなるほど高くなるのです。
具体的には、下記の税率で課税されます。

  • 1,000万円までは10%
  • 3,000万円までは15%
  • 5,000万円までは20%
  • 1億円までは30%
  • 2億円までは40%
  • 3億円までは45%
  • 6億円までは50%
  • 6億円を超えると55%

そのため、遺言書によって全財産を一人に相続させる場合、財産の総額が高額である場合は、高額な相続税を納税しなければならなくなる可能性があるのです。
専門家に相談し、適切な相続税対策をすることが重要になります。

3-3遺留分を考慮する

遺言書によって全財産を一人に相続させる場合、遺留分に注意が必要です。
遺留分とは、一定の相続人に認められている最低限度の遺産取得割合であり、原則として遺言書によっても侵害することはできません。
つまり、全財産を一人に相続させるという内容の遺言書を作成しても、遺留分を認められている相続人であれば、遺留分相当の金額を請求できるのです。
これを「遺留分侵害額請求」といいます。
遺言書によって全財産を一人に相続させる場合は、遺留分を考慮するためにも、遺言書作成時から適切な対策を練ることが重要です。

4.遺言書作成時にできる遺留分対策

遺言書によって全財産を一人に相続させる場合、遺留分がトラブルの原因となるケースが多いです。
トラブルを防ぐためにも、遺言書作成時から遺留分対策をすることが重要になります。
遺言書作成時にできる遺留分対策は、下記のとおりです。

  1. 全財産から遺留分を差し引いて一人に相続させる
  2. 付言事項を活用する
  3. 遺留分の放棄を打診する
  4. 遺言執行者に弁護士をはじめとした専門家を選任しておく

それぞれ詳しく解説します。

4-1.全財産から遺留分を差し引いて一人に相続させる

全財産から遺留分を差し引いて一人に相続させる内容で遺言書を作成することは、遺言書作成時にできる遺留分対策の一つです。
遺留分は遺言内容よりも効力が強く、遺言によって侵害することはできません。
仮に全財産を一人に相続させる内容の遺言書を作成した場合でも、遺留分が認められている相続人は、遺留分に相当する金額を請求できます。
そのため、全財産から遺留分を差し引いて一人に相続させる内容で遺言書を作成することは、遺留分対策となるのです。
事前に遺留分を計算し、その分を全財産から差し引いて一人に相続させる内容で遺言書を作成すると良いでしょう。

4-2.付言事項を活用する

付言事項を活用することも、遺言書作成時にできる遺留分対策の一つです。
遺言書において、法的効力を目的としない記載内容を付言事項といいます。
付言事項は原則として法的効力が認められておらず、記載されている内容を相続人が実行する義務はありません。
一般的に家族へのメッセージや葬儀・納骨に関する希望などを記載しますが、遺留分対策としても活用できます。
付言事項に「なぜ全財産を一人に相続させるのか」理由や自分の思いを記載することで、遺留分を請求をしない可能性が高まるでしょう。
全財産を一人に相続させる遺言書を作成する場合は、付言事項を活用し、他の相続人が内容に納得してもらうことが重要です。

4-3遺留分の放棄を打診する

遺留分の放棄を打診することも、遺言書作成時にできる遺留分対策の一つです。
遺留分は一定の相続人に認められていますが、自ら権利を放棄することもできます。
手放したあとは、遺留分を請求することはできません。
この遺留分の放棄は、被相続人の死後だけでなく、生前でも可能です。
そのため、全財産を一人に相続させる遺言書の作成とあわせて、遺留分が見込まれる相続人に遺留分の放棄を打診するといいでしょう。
「なぜ全財産を一人に相続させるのか」「なぜ遺留分の放棄をしてほしいのか」を明確に伝え納得してもらうことで、遺留分を放棄してもらえる可能性は十分にあります。
全財産を一人に相続させる遺言書の作成とあわせて、遺留分の放棄をしてもらうことで、安心して遺言書を残せるでしょう。

4-4.遺言執行者に弁護士をはじめとした専門家を選任しておく

遺言執行者に弁護士をはじめとした専門家を選任しておくことも、遺言書作成時にできる遺留分対策の一つです。
遺言執行者とは遺言内容を実現するための役割を担う人であり、未成年者や破産者でない限り誰でも選任できます。
そのため、相続人はもちろん、弁護士をはじめとした専門家を選任することも可能です。
弁護士をはじめとした専門家を遺言執行者に選任しておくことで、遺言内容の意図や遺言者の思いを相続人に伝えてもらえます。
また、相続に関する専門知識をもとに、アドバイスやサポートをしてくれるので、遺留分に関するトラブルが起こりにくいです。
なかでも遺言執行者に弁護士を選任しておけば、遺留分に関するトラブルが起こってしまっても、トラブルの解決まで任せられます。

5.遺言書以外の全財産を一人に相続させる方法

遺言書の作成以外にも、全財産を一人に相続させる方法はあります。
具体的な方法は下記のとおりです。

  1. 相続人の廃除を活用する
  2. 他の相続人全員に相続放棄をしてもらう

それぞれ詳しく解説します。

5-1.相続人の廃除を活用する

全財産を一人に相続させたい理由として、他の相続人に重大な侮辱を受けたから、他の相続人から虐待を受けたから、という人もいらっしゃるでしょう。
その場合、相続人の廃除を活用することも、全財産を一人に相続させる方法の一つとなります。
相続人の廃除とは、家庭裁判所に申し立てることで相続人を相続から廃除できる制度です。
誰でも廃除できるわけではなく、一定の条件を満たさなければなりません。
具体的には「特定の相続人から重大な侮辱を受けていた」「特定の相続人に著しい非行があった」「特定の相続人から長年にわたって暴力や虐待を受けていた」などです。
例えば、相続人が2人おり片方から長年にわたって虐待を受けていたため、もう一方の相続人へ全財産を相続させたい場合は、相続人の廃除を活用するといいでしょう。
ただし、相続人の廃除が実際に認められる確率は決して高くないので、弁護士をはじめとした専門家への相談がおすすめです。

5-2.他の相続人全員に相続放棄をしてもらう

相続の方法にはいくつか種類があり、相続放棄もその一つです。
相続放棄とは、自身が持つ相続権を放棄することであり、被相続人の財産をすべて相続できなくなります。
例えば、被相続人の債務を相続したくない場合や、相続に関わりたくない場合に用いられることが多いです。
全財産を相続する人以外の全員が相続放棄をすることで、一人に全財産を相続させられます。
ただし、相続放棄は被相続人が亡くなってからでないと申し立てができないため、注意が必要です。
事情を説明したり、弁護士をはじめとした専門家にサポートを依頼したりなど、事前の準備が必要になるでしょう。

6.全財産を一人に相続させたい場合に弁護士への相談が有効である理由

全財産を一人に相続させたい場合、弁護士への相談を活用すべきでしょう。
その理由は下記のとおりです。

  1. 全財産を一人に相続させるための遺言書を作成してもらえるから
  2. 遺言書作成以外の一人に全財産を相続させるための方法を提案してもらえるから
  3. トラブルの予防や実際にトラブルが起きた際の解決も任せられるから

それぞれ詳しく解説します。

6-1.全財産を一人に相続させるための遺言書を作成してもらえるから

弁護士には、全財産を一人に相続させるための遺言書を作成してもらえます。
遺言書は厳格な要件が定められており、ご自身で作成して不備や間違いがあり、無効になってしまうことも少なくありません。
弁護士は相続の専門家であり、遺言書作成についても豊富な経験と実績があります。
弁護士に遺言書を作成してもらうことで、法的な要件を遵守し、要望を満たした遺言書が作成してもらえるでしょう。
特に全財産を一人に相続させたい場合は、トラブルを予防するためにも弁護士への相談がおすすめです。

6-2.遺言書作成以外の全財産を一人に相続させるための方法を提案してもらえるから

全財産を一人に相続させたい場合、方法は遺言書作成だけではありません。
相続人の廃除や相続放棄の活用など、方法はさまざまです。
さまざまな方法のなかから、自分の状況やニーズにあった方法を選択するためには、相続に関する専門知識が必要になります。
相続の専門家である弁護士に相談することで、状況やニーズにあった方法を選択でき、適切に全財産を一人に相続させられるでしょう。

6-3.トラブルの予防や実際にトラブルが起きた際の解決も任せられるから

相続において、トラブルが起こるケースは少なくありません。
特に全財産を一人に相続させたいと考える場合、納得できない相続人とトラブルが起こる可能性は高いです。
相続の専門家である弁護士に相談することで、トラブルを予防するための具体的な対策についてアドバイスしてもらえるでしょう。
また、仮にトラブルが起きてしまった際にも、弁護士は紛争解決のプロとして、トラブル解決に向けて適切なサポートをしてくれます。

7.【まとめ】全財産を一人に相続させたい場合は弁護士へ相談を

いかがでしたか?
今回は、遺言書によって全財産を一人に相続させることはできるのか、注意点やその他の方法をあわせて解説しました。
原則として、遺言書によって全財産を一人に相続させることはできます。
ただし、注意点が存在するため、状況やニーズにあわせて適切な方法を選択するためにも、相続の専門家である弁護士への相談がおすすめです。

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弁護士として15年以上活動してきた経験をもとに、適切なアドバイスを心がけておりますので、遺言書の作成をはじめとした相続問題でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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