2024/11/29 コラム
遺言書があれば遺産分割協議書はいらない?必要なケースも紹介
遺言書があれば遺産分割協議書は必要ないという話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
実際には遺産分割協議書が不要なケースもあれば、必要なケースもあります。
この記事では、遺産分割協議書が不要なケースと必要なケースについて、具体例を交えて詳しく解説しています。
遺言書があっても遺産分割協議書が必要なケースについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.遺言書があれば遺産分割協議書はいらない?
結論からお伝えすると、遺言書がある場合は遺産分割協議が不要になる可能性が高いです。
遺言書と遺産分割協議書はどちらも遺産分割の方法について記す文書ですが、それぞれ違いがあります。
端的に違いを説明すると、遺言書とは遺言者が遺産分割の方法を決めたものであり、遺産分割協議書は相続人同士で遺産分割の方法を決めたものです。
原則として、遺言内容どおりに遺産分割をおこなう場合、遺産分割協議書は必要ありません。
なぜなら、相続財産は故人が生前に築き上げたものであり、故人の意思によって自由に処分できるべきという考えがあるからです。
2.遺言内容どおりに遺産分割する場合の流れ
遺言内容どおりに遺産分割する場合、原則として遺産分割協議書は必要ありません。
実際に遺言の内容にしたがって遺産分割する場合の流れは、下記のとおりです。
- 遺言書を発見する
- 検認を申立てる
- すべての相続財産が記載されているか確認する
- 遺言執行者が指定されているか確認する
- 遺言内容をもとに財産目録を作成する
- 財産目録をもとに各々が相続する財産を確認する
- 各相続人ごとに必要な相続手続きを進める
それぞれ詳しく解説します。
2-1.遺言書を発見する
遺言内容どおりに遺産分割する場合、まずは遺言書を発見することからスタートします。
公正証書遺言の場合は、遺言書の原本が公証役場で保管されているため、公証役場に出向いて検索システムを用いて確認しましょう。
自筆証書遺言の場合は、自身で保管・管理している場合もあれば、保管・管理を委託しているケースもあります。
保管・管理を委託している場合は、委託者から通知があるはずなので、簡単に発見できるでしょう。
特に法務局の保管制度を利用している場合は、遺言書の存在について相続人へ通知されるので、すぐに見つけられます。
自身で遺言書を保管・管理していた場合は、事前に保管場所が伝えられていれば簡単に発見できるはずです。
保管場所について特に聞かされていない場合は、故人の自宅や部屋の遺品から探しましょう。
2-2.検認を申立てる
多くの場合、遺言書が見つかったら裁判所での検認が必要になります。
検認とは、相続人に対して遺言書の存在や形状、遺言内容などを明らかにして、その後の偽造・変造を防ぐための手続きです。
一般的には家庭裁判所で相続人の立ち会いのもとおこなわれます。
ただし、公正証書遺言や法務局での保管制度を用いて遺言が残されていた場合は、検認が不要です。
2-3.すべての相続財産が記載されているか確認する
遺言書には、すべての相続財産が抜け漏れなく記載されているか確認しましょう。
弁護士をはじめとした専門家が遺言書の作成に関与している場合は、すべての相続財産を網羅できている可能性が高いです。
しかし、遺言者1人で作成した場合や、遺言書を作成してから長い年月が経過している場合は、現在の財産状況と相違があるかもしれません。
遺言書に記載されていない新たな相続財産が見つかった場合は、遺産分割協議によって分割方法を決定し、遺産分割協議書が必要になる可能性が高いので注意が必要です。
2-4.遺言執行者が指定されているか確認する
遺言書では遺言執行者を指定できます。
遺言執行者とは、遺言内容を実現するために権利と義務を負う人です。
遺言執行者は、相続人のなかからしていすることはもちろん、弁護士をはじめとした専門家も指定できます。
ただし、必ず指定する必要はないので、遺言執行者の指定について記載されていないケースもある点に注意が必要です。
2-5.遺言内容をもとに財産目録を作成する
遺言執行者が指定されているか確認できたら、次は遺言内容をもとに財産目録を作成しましょう。
財産目録とは、相続財産の情報を一覧でまとめたものです。
遺言執行者が指定されている場合は、基本的に遺言執行者が財産目録を作成します。
遺言執行者が指定されていない場合は、財産目録が作成されないケースも少なくありません。
ただし、のちの手続きをスムーズに進行し、将来のトラブルを防ぐためにも、財産目録の作成がおすすめです。
2-6.財産目録をもとに各々が相続する財産を確認する
財産目録が作成できたら、その内容をもとに各相続人が引き継ぐ財産を確認しましょう。
基本的に、財産目録には相続財産の詳細情報が記載されています。
自分は「なに(不動産や預貯金など)」を相続するのか、それは「どこにある(口座番号や住所など)」のかをしっかりと確認することが重要です。
2-7.各相続人ごとに必要な相続手続きを進める
それぞれ相続する財産を把握したら、各相続人ごとに必要な相続手続きを進めましょう。
不動産や預貯金、投資信託など、相続する財産によって必要な手続きは異なります。
例えば、不動産を相続する場合は、相続登記(不動産の名義変更)が必要です。
相続に関する手続きは、それぞれ手続きをおこなう場所も異なるので、注意して進めましょう。
不明点や懸念点があれば、弁護士をはじめとした専門家に相談することもおすすめです。
3.遺言書があっても遺産分割協議書が必要なケース
遺言書があっても、なかには遺産分割協議書が必要なケースもあります。
具体的なケースは下記のとおりです。
- 遺言書が無効になった場合
- 相続人および受遺者全員で遺言書を無効にすると決めた場合
- 遺言書に記載されていない相続財産が見つかった場合
それぞれ詳しく解説します。
3-1.遺言書が無効になった場合
遺言書があっても、無効になった場合は遺産分割協議が必要になる可能性があります。
なぜなら、遺言書が無効になる場合は、遺言内容どおりに遺産分割を進められなくなるからです。
遺言書には厳格な作成形式が法律で定められており、特に自筆証書遺言の場合は形式不備によって無効になるケースも少なくありません。
遺言書が無効になった場合は、もともと遺言書がなかったことになるため、遺産分割協議によって遺産分割協議書を作成する必要があるでしょう。
3-2.遺言書に記載のない相続財産が見つかった場合
遺言書があっても、あとから遺言書に記載のない相続財産が見つかった場合、遺産分割協議が必要になる可能性があります。
「すべての財産を相続させる」「遺言書に記載のない財産も含む」などと記載されていない場合、遺言書に記載されている相続財産のなかに抜け漏れが生じているケースも多いです。
また、遺言書に記載した財産に誤りがある場合も、抜け漏れがある財産と扱われてしまうため、注意が必要になります。
遺言書に記載のない財産が新たに見つかった場合は、遺産分割協議によって財産の行方を決めることになる可能性が高いため、遺産分割協議書が必要になるでしょう。
3-3.遺言内容に従わないで遺産分割をしたい場合
相続を進めるうえで、遺言内容に従わないで遺産分割をしたいケースもあるでしょう。原則として、相続人および受遺者全員で合意すれば、遺言内容を無視して遺産分割を進められます。
遺言内容に従わないで遺産分割を進める場合、原則として遺産分割協議によって財産の行方を決めることになるため、遺産分割協議書が必要になる可能性が高いです。
4.遺言内容どおりに遺産分割する以外の遺産分割協議書が不要なケース
遺言内容どおりに遺産分割する以外にも、遺産分割協議書が不要なケースが存在します。
具体的なケースは下記のとおりです。
- 相続人が1人だけの場合
- 相続財産が現金・預金だけの場合
- 法定相続分にしたがって遺産分割する場合
それぞれ詳しく解説します。
4-1.相続人が1人だけの場合
相続人が1人しかいない場合、原則として遺産分割協議書は必要ありません。なぜなら、相続人が1人だけの場合は、その人がすべての財産を相続するため、遺産分割協議書に遺産の分割方法について取りまとめる必要がないからです。
はじめから相続人が1人だけのケースはもちろん、他の相続人が相続放棄をすることで1人だけになったケースも同様に、原則として遺産分割協議書は必要ありません。
4-2.相続財産が現金・預金だけの場合
相続財産が現金・預金だけのケースも多いです。相続財産が現金・預金だけの場合、遺産分割協議書なしで相続手続きを進められます。
金融機関で預金の払い戻しをおこなう場合は、金融機関所定の書類を提出することになるのが一般的です。
4-3.法定相続分にしたがって遺産分割する場合
法定相続分にしたがって遺産分割する場合も、原則として遺産分割協議書は必要ありません。法定相続分とは、各相続人に法律で定められている遺産取得割合のことです。
法律で定められている内容であるため、遺産分割協議書にまとめなくてものちのトラブルにつながるリスクが少ないです。
ただし、不動産を共有名義で相続する場合は、権利関係が複雑になるリスクがあるので、遺産分割協議書を作成しない場合は注意が必要になります。
5.遺産分割協議書が必要かどうか悩んだ場合の対処法
遺産分割協議書が必要かどうかは、個々の状況によって異なります。
作成すべきか悩んだ際は、下記の対処法を実践してみましょう。
- トラブル防止のために作成しておく
- 弁護士をはじめとした専門家に相談する
それぞれ詳しく解説します。
5-1.トラブル防止のために作成しておく
遺産分割協議書を作成すべきか悩んだ場合は、トラブル防止のために作成しておいたほうがいいでしょう。相続を進めるうえでは、遺産分割協議書が不要なケースも存在します。
しかし、相続人同士で話し合って決めた内容に対して、あとから「気が変わった」「実は同意していなかった」と言い出す相続人が出てくるケースも少なくありません。
後々のトラブルを避けるためにも、相続人同士で話し合って決めた内容は遺産分割協議書にまとめておくことがおすすめです。
5-2.弁護士をはじめとした専門家に相談する
遺産分割協議書が必要かどうか悩んだら、弁護士をはじめとした専門家に相談しましょう。遺産分割協議書が必要かどうかは、それぞれのケースによって異なります。
弁護士をはじめとした専門家は、相続に関する専門知識を有しており、ケースにあわせた適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。
スムーズかつ適切に相続を進めるためにも、お困りの際は弁護士をはじめとした専門家に相談してみましょう。
6.まとめ【遺産分割協議書が必要か悩んだ場合は弁護士に相談を!】
いかがでしたか?
今回は遺言書があれば遺産分割協議書はいらないのかについて解説しました。
原則として遺言書があり、遺言内容どおりに遺産分割する場合、遺産分割協議書は必要ありません。
それ以外にも、遺産分割協議書が不要なケースもありますが、一方で遺言書があっても遺産分割協議書が必要なケースもあります。
遺産分割協議書が必要かどうかはケースによって異なるため、お困りの際は弁護士への相談がおすすめです。
広島市にある「いちじょう法律事務所」では、初回相談無料で承っています。
弁護士として15年以上活動してきた経験をもとに、適切なアドバイスを心がけておりますので、相続問題でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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