コラム

2024/08/30 コラム

遺言書と遺留分はどちらが優先?遺留分侵害額請求も具体例を交えて解説

遺言書の内容に沿って相続を進めていくことは、相続トラブルを防ぐうえで非常に有効です。
しかし、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、トラブルの原因となるリスクがあります。
相続を進めていくうえで遺留分について詳しく把握しておくことは、トラブルの予防・解決において大切です。
この記事では、遺留分について遺言書とどちらが優先されるのか詳しく解説します。
遺留分が侵害されている場合に請求できる「遺留分侵害額請求」についても、具体例を交えて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.遺言書の内容よりも遺留分が優先

結論からお伝えすると、遺留分は遺言書の内容よりも優先されます。
相続における遺留分とは、一定の相続人に認められている最低限度の遺産取得割合です。
この遺留分は遺言書の内容よりも優先されるため、遺言内容によって遺留分を侵害することはできません。
仮に、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、遺留分を侵害されている相続人は遺留分に相当する金額を侵害者へ請求できます。

2.遺留分とは?

遺留分とは、一定の相続人に認められている最低限度の遺産取得割合です。
では、遺留分はどの相続人に認められるのでしょうか。
遺留分が認められる相続人について、遺留分の割合もあわせて詳しく解説します。

2-1.遺留分が認められる相続人

遺留分が認められる相続人は、下記のとおりです。

  • 配偶者
  • 直系卑属(子どもや孫など)
  • 直系尊属(親や祖父母など)

これらの相続人には遺留分が認められているため、他の相続人に遺留分を侵害された場合は、遺留分に相当する金額を請求できます。
なお、被相続人の兄弟姉妹には、原則として遺留分が認められていないので注意が必要です。

2-2.遺留分の割合

遺留分の割合は、法定相続分の2/1または3/1と法律で定められています。
具体的には、相続人が直系尊属(親や祖父母など)だけの場合は法定相続分の3/1となり、それ以外の場合は法定相続分の2/1が遺留分の割合です。
ただ、直系尊属だけが相続人となるケースは少ないため、遺留分は法定相続分の2/1の割合となるケースが多いでしょう。

3.遺留分を侵害していると判断できる遺言書の例

被相続人が遺言書を残している場合、その遺言書が遺留分を侵害している可能性があるため、適切な判断が求められます。
例えば「遺産はすべて長男に相続させる」という内容の遺言書は、遺留分を侵害している可能性が高いです。
他にも、2,000万円分の相続財産があり、遺留分が1,000万円である妻に対して、遺言書で300万円しか相続の指定を受けられなかった場合も遺留分を侵害していると判断できるでしょう。
このように、一部の相続人を優遇したり、遺産分配の割合が偏ったりしている遺言書は遺留分侵害が起きている可能性もあるので注意が必要です。

4.遺留分を計算する方法について具体例とともに解説

遺留分は「遺留分の基礎となる財産」×「個別の遺留分割合」で計算できます。
具体例として、相続財産の総額が1,200万円、相続人が配偶者子ども2人(長男と次男)として「長男にすべての財産を相続させる」という遺言書があった場合の遺留分を計算します。

まず、今回「遺留分の基礎となる財産」は1,200万円です。
次に「個別の遺留分割合」を計算します。
配偶者の法定相続分は相続財産の2/1、遺留分はその2/1なので「個別の遺留分割合」は4/1です。
今回、次男の法定相続分は相続財産の4/1、遺留分はその2/1なので「個別の遺留分割合」は8/1となります。
最後にそれぞれ「遺留分の基礎となる財産」と「個別の遺留分割合」をかけ合わせれば、遺留分を計算できます。
配偶者:1,200万円 × 1/4=300万円
次男:1,200万円 × 1/8=150万円
今回のケースでは配偶者の遺留分は300万円、次男の遺留分は150万円と計算できるのです。

5遺留分侵害額請求で最低限の遺産を相続可能に

遺留分を侵害されている場合、遺留分侵害額請求を活用することで最低限の遺産を相続できます。
遺留分侵害額請求について、下記のポイントを押さえておくことが重要です。

  • 遺留分侵害額請求とは
  • 遺留分侵害額請求の時効

それぞれ詳しく解説します。

5-1.遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、不平等な遺言や贈与によって法定相続人の遺留分が侵害された場合、その侵害を受けた相続人が、相続財産の一部を取り戻すためにおこなう請求です。
遺留分は、一定の相続人が最低限受け取れる相続財産の割合を指し、これを守るための権利が「遺留分侵害額請求権」です。
例えば「長男にすべての遺産を相続させる」という内容の遺言書が残されていたとしても、次男や長女には遺留分があるため、長男に対して遺留分侵害額請求をおこなえます。
具体的には、次男の遺留分が500万円分侵害された場合、次男は長男に対して500万円の支払いを求められるのです。
遺留分侵害額請求は、遺産分割において不公平が生じた場合に相続人の権利を守る重要な手段となります。
遺言による遺産分配が相続人の遺留分を侵害する場合、遺留分侵害額請求権を行使することで、最低限の財産を確保できます。

5-2.遺留分侵害額請求の時効

遺留分侵害額請求権には、請求できる期間が法律で定められています。
相続が開始されたこと、および遺留分を侵害するような贈与や遺贈があったことを知った日から1年間、または相続が開始された日から10年間が時効となります。
この期間内に請求をおこなわないと、請求する権利を失ってしまうため、注意が必要です。
例えば、相続開始後に遺留分が侵害された事実を知り、そのまま放置して1年が過ぎてしまうと、遺留分侵害額請求はできなくなります。
また、相続開始から10年が経過している場合も同様に請求権を失います。
このように、遺留分侵害額請求には厳しい時効が設けられているため、早めの行動が重要です。

6.遺留分侵害額請求ができない事例

遺留分が侵害されている場合でも、なかには遺留分侵害額請求ができない事例もあります。 具体的な事例は下記のとおりです。

  • 時効が過ぎている
  • 遺留分の権利がない相続人

それぞれ詳しく解説します。

6-1.時効が過ぎている

遺留分侵害額請求をする場合、時効に注意が必要です。
遺留分侵害額請求には、遺留分を侵害するような贈与や遺贈があったことを知った日から1年間、または相続が開始された日から10年間という時効が定められています。
この時効を過ぎた場合、原則として遺留分侵害額請求はできません。
時効までに請求ができるよう、早いうちから準備をおこないましょう。
時効が迫っている場合は、弁護士をはじめとした専門家の力を借りることもおすすめです。

6-2.遺留分の権利がない相続人

遺留分侵害額請求をしようと思っても、遺留分の権利がない相続人は原則として請求できません。
そもそも遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害された際に、その侵害額に相当する金額を侵害者に請求することです。
遺留分の権利がない相続人は、遺留分を侵害されることがないため、遺留分侵害額請求はできません。
具体的には、被相続人の兄弟姉妹が遺留分の権利がない相続人に該当します。
被相続人の兄弟姉妹は遺留分侵害額請求ができないので、注意が必要です。

7.遺言書の遺留分侵害について弁護士に相談するメリット

遺言書の遺留分侵害があった場合は、弁護士に相談することがおすすめです。 具体的なメリットは下記のとおりです。

  • 弁護士の介入によりスムーズに手続きを進められる
  • 相続に関するアドバイスを貰えることが期待できる
  • 調停や裁判になっても任せられる

それぞれ詳しく解説します。

7-1.弁護士の介入によりスムーズに手続きを進められる

遺言書で遺留分侵害が起きている場合、当事者だけで解決に向けて手続きを進めても、かえってトラブルにつながるリスクがあります。
なぜなら、当事者一人一人が自身の利益ばかりを優先してしまう恐れがあるためです。
専門知識がないまま自身の利益ばかり主張しても、問題がさらに拗れてしまうだけです。
弁護士に相談することで、専門知識を有した第三者として問題解決にあたってくれるため、スムーズに手続きを進められるでしょう。

7-2.相続に関するアドバイスを貰えることが期待できる

弁護士へ相談することで、相続に関するアドバイスを貰える可能性が高いです。
遺言書の遺留分侵害は相続問題の一つですが、対応を誤るとその他の問題へ発展するケースも少なくありません。
遺言書の遺留分侵害をはじめとした相続問題の対応には、専門知識が必要になるため、個人で対応するにはハードルが高いケースも多いです。
遺言書の遺留分侵害をきっかけに弁護士へ相談することで、その他の相続問題についても予防法や対処法についてアドバイスを貰えます。
スムーズかつ適切な相続を実現するためにも、弁護士の専門知識を活用しましょう。

7-3.調停や裁判になっても任せられる

遺言書の遺留分侵害は、調停や裁判に発展してしまうケースも少なくありません。
特に遺留分は金銭が関係する問題のため、当事者だけでは話し合いがまとまらない可能性も高いです。
当事者だけで話し合いがまとまらない場合、基本的には調停や裁判によって問題解決を目指すことになります。
これまで調停や裁判を経験したことがあるという人は少ないでしょうから、初めての経験となると不安や疑問を多く抱えることでしょう。
弁護士に相談することで、調停や裁判になっても対応を任せられます。
専門家である弁護士が代理人となって、適切に調停や裁判の対応をしてくれるので安心です。

8.まとめ【納得のいかない遺言書は弁護士に相談】

いかがでしたか?
今回は、遺言書と遺留分はどちらが優先なのか、遺留分侵害額請求も具体例を交えて詳しく解説しました。
原則として遺留分は遺言書の内容よりも優先されます。
遺言書の内容が遺留分を侵害している場合は、遺留分侵害額請求が可能です。
スムーズかつ適切に手続きを進めるためにも、お困りの際は専門家である弁護士への相談を検討しましょう。
広島市にある「いちじょう法律事務所」では、初回相談無料で承っています。
弁護士として15年以上活動してきた経験をもとに、適切なアドバイスを心がけておりますので、遺言書の作成をはじめとした相続問題でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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